前にもブログに投稿しましたが、私は昨年、GID(性同一性障害)と向き合って生活しているPさんと、生活相談所活動を通じて知り合いになりました。
彼女はいま会社に就職し、保険料をきちんと納めています。
にもかかわらず、彼女は医者に行きたくてもいけないのです。
最近体調を崩し、身体の半分にしびれが生じて、このまま放置しておくと、歩けなくなったり、言語に呂律がまわらなくなる恐れが…。
だったら、保険証を持って医者に行けばいいじゃないかって、素人考えならそういうことになるでしょう。
けど、「自分の保険証に『男』と印字されているのを見るだけでもつらいんです」─。
Pさんには未成年の子どもがおり、現在の法律(性同一性障害特例法)では、性別変更はできません。
よって、保険証に「女」とは書けないのです。
神戸市の国民健康保険証の場合は紙製なので、表面の性別記載を空欄にしておくくらいのことはできます(ただし、「裏面参照」と表記し、裏面の備考欄に「戸籍上の性別は…」と記載されています)。
しかし、協会けんぽの保険証はプラスティック製。
表面の標記を空白にできませんかと、Pさんが健康保険協会兵庫支部に電話で問い合わせたところ、「うちはプラスティック製なので技術的に無理です」と素っ気ない返事しか返ってきませんでした。
このままだと、病気が進行する。国保に切り替えるなら、今の仕事を退職しなければならない!そんなときに私のところへ再び相談が寄せられたのでした。
私は早速、協会に電話をして3月26日の夕方、Pさんといっしょに事務所へ。
2人の担当者(業務改革推進グループ)が応対しました。
「性別の記載を「女」に変えてくれと言ってるのではありません。
彼女は保険証を使えないのです。なぜ“男”扱いしかできないのですか?」
「シールを貼って割り印を押すことが考えられますが、偽造を防ぐ技術は今のところありません。お気持ちはわかりますが…」
「保険料を払っているのに保険証が使えないのですよ!なんのための医療保険制度ですか?」
「本部に問い合わせたところ、全国でも問い合わせがあると聞いています。印字処理に ついては技術的に可能かどうか、本部が印刷会社と協議しています」
「この保険証、見るのも辛いので、この場でお返しします」と、Pさん。
「いや、それはお預かりできません。本部長も重く受け止め、前向きに検討すると。どこまでお客様のご希望に添えるかどうかまでは言えませんが…本部には早急に対策をとってくれとは申し伝えます」
「技術的に不可能だと判れば、紙の保険証にできませんか?」
「そういうことも考えられますが…」─。
保険証の技術的な制約に縛られて医者にも行けない。
それなら、なんのための国民皆保険制度なのか…。
身体のしびれを我慢しながらの出勤。
相談活動は、いま始まったばかりです。
そして、GID特例法を改正して性別変更の用件を緩和するべきです。