「人間の翼」(岡本明久監督・1996年作品)という作品のDVDを借りて視聴しました。
石丸進一さんという20代の青年が「神風特別攻撃隊」の犠牲になっていくストーリーです。
とても有名な作品で、漸く手にすることができました。
石丸さんは、戦時中のプロ野球選手(当時は職業野球選手と呼ばれていました)。
名古屋軍(現在の中日ドラゴンズ)のエースで、わずか3年の選手寿命でしたが、ノーヒットノーランを成し遂げたこともある好投手でした。
佐賀商業時代に、当時の川上哲治さん率いる熊本工業と対戦して勝利したシーンが映画の初めに出ていました(映画には出てませんが、当時の熊本工業には戦死した元巨人軍の吉原正喜捕手もいたということになります)。
実家の家計を助けるべく学生野球への道を選ばずに、大学夜間部に籍を置きながら職業野球選手として身をたてます。しかし戦況が悪化を極め、学徒出陣を命じられます。恋人のお父さんから「この戦争は、そう長くは続かないと思う。決して死に急いではいけない」 と、アドバイスされます。
当時としては、たいへん勇気のあるアドバイスではなかったか。
婚約期間も束の間、妻は空襲の犠牲になり、その訃報の知らせを戦地で知らされます。
野球生活を中断させられ、恋愛も戦争によって引き裂かれてしまいます。
戦況が悪化し、特攻隊員として志願した石丸さんが出陣し、アメリカの軍艦に激突しにいくことに。「おいは、野球じゃー!」吐き捨てるように言い残した有名な言葉です。
もし戦争がなかったら、どれだけ活躍していたことか。
また、幸せな家庭を築き、優しい人柄で親にも兄弟にも孝行していたことだろう…。
石丸進一さんについては、靖国神社の「遊就館」でも功績をたたえて、遺影を展示しています。
しかし、戦争は人間から自由も夢も希望も奪い取り、命を鉄の固まりの一部のであるかのように軽く扱うという事実を消去してはいけません。