日刊「しんぶん赤旗」の国際欄には毎日、米ジョンズ・ホプキンズ大学による新型コロナウィルス感染症についての主な諸外国のデータが掲載されています。
イギリスは5月7日頃に死者数が30000人を超え、アメリカに次いで2番目に多い国になってしまいました。
さらに私が注視しているのは、同国の「回復者数」が他国と比較して極端に少ないことです。
例えば5月17日時点で、ドイツは152600人、スペインは146446人、イタリアは122810人、フランスは60562人、ベルギーは14460人ですが、イギリスは1058人にすぎません。
ひょっとしたら、「回復者」の定義について国によって差があるのかもしれません。
また、集計方法に違いがあるのでしょうか。
素直にとらえたら、退院された方を指すでしょう。
それが極端に少ないということは、一体どういうことなのか?
病院への受け入れが、よほど重篤な患者に限られているのではないでしょうか?
イギリスの医療制度では、国民は救急医療の場合を除き、先ず、あらかじめ登録した一般家庭医の診察を受ける必要があり、紹介によって病院の専門医を受診する仕組みとなっています。
要するに、紹介がないと病院を利用できない(最近の日本の病院もそういう傾向が強まってきていますが)ということ…。
これまで、医療費の抑制を図って来たんだろうと、なんとなく想像がつきます。
コロナウィルス感染者数は、人口約890万人のロンドンが最も多く(イギリスの都市部の人口はロンドンに集中しています。2番目に多いのがバーミンガムで約114万人)。
報道によると、BAME(Black,Asian&Minorithy Ethnic)の人たちの間で重篤患者の割合が高いこと、医療従事者の死亡数が多いこと、医療物資の不足が深刻なことも言われています。
ちょっと単純な比較をしてみました。
例えば、人口1000人あたりの医師数では、
日本が2.4人(2016年)
ドイツは4.3人(2017年)
イギリスが2.9人(2018年)
同じく看護師数は、日本が11.3人(2016年)
ドイツは12.9人(2017年)
イギリスが7.8人(2018年)です。
人口1000人あたりのベッド数(急性期とリハビリを合わせた数値)は、
日本は13.1床
ドイツは8.0床に対し、
イギリスは2.5床と極端に少ないです(いずれも2017年)。
~出所;OECD Health Statistics 2019より。
「しんぶん赤旗」(5月6日付け)は、ドイツが他の欧州諸国よりも命を救っていることを紹介しています。
この記事では、集中治療室(ICU)病床数が、「新型ウィルス拡大前に、約2万8000床もありました。
人口当たりではイタリアやフランスの2~3倍」に当たることを示し、「病床数の多さが、ドイツの新型ウィルス抑制の大きな要因だ」(モントゴメリー・ドイツ医師会会長)のコメントを紹介しています。
厚生労働省の資料を拝見しました。
「人口10万人当たりのICU等病床数」では、
ドイツ 29.2床
イタリア12.5床
フランス11.6床
で、確かにドイツは伊・仏の2~3倍であることがわかります。
イギリスは…
6.6床。
さらに少ない(他、スペインが9.7床と掲載されていました)。
~出所;厚生労働省医政局(令和2年5月6日)「ICU等の病床に関する国際比較について」
イギリスは病院を民間に設計、建設、資金調達、運営を任せるPFI方式がブレア政権下で強められてきました。
公共の仕事を民間に積極的に明け渡して、財政削減を進めてきたのです。
公的な医療を削減して脆弱な医療体制にしてきた結果、陽性患者の命を救い、健康を回復させたくても、それが極めて困難な状況に陥っていることを窺わせます。